リビングテック協会 -LIVING TECH ASSOCIATION JAPAN-

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暮らしと仕事と遊びの境界がとけあう時代に、空間はどうあるべきか?

2020.07.09

暮らしと仕事と遊びの境界がとけあう時代に、空間はどうあるべきか?

2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「シェアリングエコノミー―空間を活用した新たな価値観や収益機会の創出」と題して行われたセッション(全9回)の5回目をお届けします。WeWork、そしてスペースマーケットが直面する課題とは。シェアリングエコノミーのさらなる成長のために、何が必要なのか。

登壇者情報

WeWorkが狙うのは、働き方のゲームチェンジ

Chris: 私が考える課題というのは、2種類あると思います。1つ目は戦術的な課題。そして2つ目は環境、社会的な課題と言えると思います。

最初に、戦術的な課題です。9ヶ月ほど、東京の市場に入る準備をしていまして、もうすでに3,000社以上がWeWorkでスペースを借りたいと言ってくださっています。これだけの需要に見合った空間を提供できるのかというのが、目下の大きな課題です。これはうれしい課題と言えるでしょう。

2つ目は、より環境、日本の社会にまつわる課題です。日本には昔から終身雇用制という概念があり、場合によっては40年も同じ会社で働き続けるということもあります。今まで、同じ会社にずっと居続ける方々は、例えば自分の夢を追う、自分自身で意義があると感じる仕事を自分でつかみ取っていくということを、あまりにされていなかったのではないかと思います。

昨今は、ミレニアル世代や若い方のサポートによって、より多くの方々が自分の夢をかなえるなど、自分のライフワークとなるようなものを自分で見つけてつかみ取っていく動きがどんどん拡大していると思います。ぜひこれは若い世代だけではなくて、全ての世代の方々にこのような働き方ができるようになっていただきたいと考えています。

「転貸」は本当にNG?世の中についていけない不動産のルール

重松: 3,000社はすごいですね、うらやましいです。

私が考えている課題もお話しします。私はシェアリングエコノミー協会という業界団体を立ち上げていて、そこの代表理事も務めていますが、やはり今、世界的にものすごい勢いでルールチェンジが起きているわけですよね。特にこのリビングテック、不動産業界、そういったところで非常に大きなトレンドが変わってきていると。

先ほど山崎さんがおっしゃっていましたけれど、住む、働く、遊ぶなど、そういったところの境界線がどんどん曖昧になり、すごく近くなってきているわけですよね。しかし、まだ不動産業界などはすごくきっちり分けたがるのです。

例えば、我々のビジネスは空いているスペースを貸すというところで「転貸」ということが発生しますが、頭から「転貸は悪い」という考えがあります。それもセキュリティなどの問題でダメだと言われることが多いのですが、それも全部、まさに小原さんのようですけれども、今はIoTで解決できるわけですよね。セキュリティが危ないんだったらスマートロックつければいいじゃんとか、カメラつければいいじゃんとか。テクノロジーを駆使したほうが、通常の不動産運用のようなやり方でいくよりも、絶対にリスクは低減されるわけですね。

慣習を破ろうとしないことこそが、一番のリスクである

今、どんどんいろんなことが解決できる時代です。IoTもそうですし、いろんな技術で解決できることが増えてきたときに、セキュリティなどこれまでリスクと思われていたリスクは、もはやリスクではないと思うんですよね。やらないことがむしろリスクです。そこにチャレンジをしていこうとしないという業界全体の古さを感じますし、テクノロジーに対しても積極果敢に取り込んでいかないところが、ほかの国と全く違うなと思います。

WeWorkさんも、まさにテクノロジーカンパニーだと思っていて。本日来られている方は、今の住まい方、テクノロジーや不動産をどのように活用して新しいビジネスをつくり、儲けていこうかというところを考えているのだと思います。

ですので、私が言いたいこととしては、どんどん積極果敢にチャンレジをしていきましょうと。隣の中国を見てくださいと。たったの1年で、シェアリング自転車が町中に満ち溢れているわけですよ。日本の10倍の規模でやっていて、モバイル決済なのでスマホがないと何もできない。現金を持ち歩くことは恥ずかしい、そんな国が隣にあるんですよ。

とにかく、どんどんチャレンジしていかないと、ほかの国に攻め込まれて飲み込まれてしまう危機感があります。我々としてはそういうところを変えていきたいなと。日本人として、そこはできなくないんじゃないのかなと思います。